私とスペイン
A pesar de la larga distancia, la hermosa armonía soñará eternamente.
海越えて 音の調べの美しさ 我が心に永久に響かん
3年間暮らしたマドリーからの帰国時、お世話になった音楽教室の先生や仲間たちに贈った富士山の写真の裏に書き記したこの句を、座右の銘にしている。
満開のアーモンドの花と桜を見る度、私を迎え、送り出してくれたスペインと日本の良さを再認識する。2つの故郷がある私はなんて幸福であろうか。
帰国後、スペイン語講師をしながら、スペイン歌曲等を歌わせていただく機会にも恵まれた。教科書の執筆者である坂東先生にお出会いすることが出来、先生の勤務されている大学での弁論大会で歌わせていただいた際には、娘の恩師とお話することも出来た。
夫の赴任に同行していなかったら、今の私の人生は全く違っていただろう。スペインとの出会いが私の世界を広げ、人との出会いをずっと紡いでくれている。
1993年4月、ピソが決まるとすぐ、辞書を片手にピアノを買いに行った。「ジュンチャン」のピアノを薦められた。商標を見るとYoung Chang (made in Korea)とある。カスティジャーナのYの発音について、体験学習できた瞬間だった。このピアノは帰国時、主人の先輩の友人宅に引き取っていただき、私たちがお邪魔するたび、マドリーで再会できるようになっている。
スペイン語のおぼつかない私が、Academia de la música Amadeusの門を気軽に叩けたのは、音楽は世界共通語であるという認識が私を支えてくれていたからである。当時は、3大テノールの全盛期で、私は本場で発声の基礎から再学習する意気込みで満々だった。2人の子ども(3歳と3ヶ月)の子育て真最中であったが、大家さんの“alegre con niños”(子育てを楽しみなさい!)の忠告と、どこへ行くにもバギーの私に手を差し伸べてくれるマドリレーニョ達の笑顔に後押ししてもらい、(もちろん夫の協力も得て)スペインで自分を育てる時間を確保することができた。
本当に自分に必要なものだけを吟味し、時間を有効に使うという信念を少しずつ実行できるようになったのは、滞西中に父の急逝を体験したことも大きく影響している。
また、私の授業を受けてくれた生徒たちが、イスパニア学科に進学したり、留学や旅行でスペインや南米の国々を訪れたと報告してくれたりする度に、私のスペインに対する情熱が伝わったという喜びと、さらに多くの人に伝えたいという気持ちが膨らむのである。残る人生も悔いなく、日本とスペインを繋ぐお手伝いをしながら、スペインの音の調べと共に生きていきたいと思っている。
【ライブのお知らせ】
日時:6月5日(土)14:30~
場所:ジャズラウンジ<ロイヤルホース>
大阪市北区兎我野町15-13 ミユキビル1階 06(6312)8958
クラシックギタージャジーアフタヌーンコンサート
●ギタリスト:久住一人
●vocal: 大津はるみ

